塩田平の民話・伝説について探究を行った。民話などの伝承はその地域の特性や特徴が大きく反映されているものが多いので、どんな話がどんな価値を持って伝承されてきたのかを探究することによって、上田塩田平の魅力の再発見することができると考え、それを目的として取り組んだ。調査方法としては、塩田の里交流館や、国立国会デジタルコレクションなどのインターネット上の情報、書籍などを利用した。
★クリップ塩田平の民話を調査するにあたって、とっこ館を見学したが、それがどのような施設だったのかを紹介する。見学を通して、とっこ館は塩田平の歴史・文化を学べるところになっていると感じた。具体的には地域の歴史や遺産の紹介がされている展示物や、上田市周辺で産出する鉱物などが展示されており、図や実物を見て、塩田平地域の文化や歴史を分かりやすく理解することのできる施設になっていると感じた。塩田平の歴史・伝承を知りたい人、特に、上田市に来たばかりで、塩田平地域について全く知らない人などはとっこ館を利用すると、塩田平がどんな地域であるのかが大体把握できると思った。
(館内写真は撮影・掲載の許可を得て掲載しています。)
この神社は独鈷山の麓にある神社で、独鈷山の山岳信仰から生まれたとされている。境内は木々に囲まれており、外界と隔てられたような神秘的な印象を受けた。
伝承の内容
昔、この神社に彫られている彫刻の竜が、夜に御神木で遊んでいたそうだ。そのうちにその木の枝が折れて枯れそうになってしまい、村人たちは困っていた。そこで、その竜を掘った人に頼んで、目玉を取ってしまった。その後のある夏に大夕立が起き、御神木に雷が落ちて煙が上がり、折れてしまった。村人たちは、竜の目玉を取らなければ、竜が雨を降らせて御神木の火を消してくれたのにと後悔したそうだ。
実際に前山塩野神社に行ってみると、御神木には柵と屋根がついており、この伝承の出来事以降、大切に守られてきたのかなと感じた。竜が雨を降らせてくれるというような記載があるため、竜が天候を操ることを信じていたことが分かるが、雨の少ない塩田平で雨を降らせてくれる竜をどうして痛ぶったのか疑問に思った。むしろ、この竜の目玉が無くなったから、雨が少ない地域になり変わってしまった可能性は無いかなとも思った。私は、この伝承は、次に同じように竜が見られたら、大切にするように後世に伝えるためのものであると感じた。
参考文献
上田市塩田文化財研究所『信州の鎌倉 塩田平の民話』(信毎書籍出版センター 1993)
塩田の里交流館「とっこ館」の正面道路を挟んで向かい側にある大きな池のお話。
伝承の内容
舌喰池が作られたころ、土手から水が漏れてしまっており、人柱を入れないと水が貯まらないという話がどこからか伝わっていた。(人柱とは、人を生き埋めにして祈ること。)結果的にくじ引きで、村外れの娘が人柱として選ばれた。その娘は、自分の不運を嘆き、舌を食い切り池へ身を投げ、死んでしまったそうだ。その後、村人たちはその出来事を受けて、この池を「舌喰池」と呼ぶようになった。
現在の舌喰池は、とても綺麗で、決してそこで人が死んでいるような印象は受けなかった。池周りの「憩いの広場」の芝も短く刈られて整備されており、とても大切にされているような印象を受けた。そのことから、地域の人々がその悲しい出来事を踏まえて、2度も悲惨なことを起こさないように丁寧に守られてきたのかなと感じた。そもそもなぜ人柱の話が村民の中で上がってきたのかが謎だが、現代よりも科学文化が発達していないので、分からないことを勝手に自己解釈して人柱の話に結びつけた人がいるのではないかと思った。
参考文献
上田市塩田文化財研究所『信州の鎌倉 塩田平の民話』(信毎書籍出版センター 1993)
出典
藤沢衛彦 編『日本伝説叢書』信濃の巻,日本伝説叢書刊行会,大正6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/953569 (参照 2024-01-25)
自分が調べた限りでは、ネット上にこのお話の詳しい説明が書かれた記事がなかったので取り上げてみた。現在、この木は無いそうなので、そもそも塩田平の方々もほとんど知らないようなマイナーなお話なのではないかと感じた。別所温泉で縁結びと聞くと、北向観音前にある「愛染かつら」を思い浮かべるが、他にもこのような木がかつてあったことを初めて知った。もし仮に、現代にもこの木が残っていたとしたら、現在の別所五木が別所六木になっていたのかもしれないほどのストーリーを持っていると思った。
塩田平の民話は、現場に行って体験しないと気づかないこともあると思った。例えば、前山塩野神社の伝説の拝殿に彫刻された龍が出てくる話は、文だけを見て、龍は一匹だけなのかなと思って読んでしまったのだが、実際に前山塩野神社を見てみると、龍は複数彫られている。(写真参照)そのことから、目玉をくり抜かれた龍はどれだったのか。はたまた複数いたのではないか。と色々考えることができるため、現場に行かないと分からない面白みが塩田平の民話にはあると感じた。したがって、塩田平の民話に興味を持った際には、ぜひ民話の現地に行って体験してみることをおすすめする。また、縁結びの美欄樹の話など、インターネット上で紹介されていない民話が塩田平には存在していたことが分かった。加えて、自分が調べた限りでも、塩田平には100を超える民話が存在していたので、塩田平地域の人でも知らない民話が結構あるのではないかと思った。よって、上田の民話はたくさん存在しており、そもそもの数が多いので、調べれば調べるほど上田地域を変わった視点から見ることができる魅力があると感じた。