今年2022年は、セイジオザワ松本フェスティバル(OMF)の前身サイトウキネンフェスティバル松本が1992年に開催されてから30周年になります。私も1999年以来、ほぼ毎年松本を訪れてきました。コロナ禍の中断を挟み3年ぶりの再開は何物にも代えがたいものです。
8/24、オペラ公演『フィガロの結婚』を見に出かけました。『フィガロ』は何度も見たオペラで今さらの感もあり、一番安い最上階の4階席(天井桟敷)で鑑賞しました。これもとても得難い経験です。
上演は実に素晴らしいものでした。1999年以来欠かさずに見続けてきた松本でのオペラ公演の中でもベストと断言しても過言ではありません。
生きるって素晴らしい。『フィガロ』からはそういう人生讃歌の肯定感が伝わってきます。次々と一癖ある人物たちが登場し、ドタバタをn重唱で繰り広げる1・2幕の面白さ。対照的に語り(レチタティーボ)多く落ち着いて展開する3・4幕。奇をてらったり、考えすぎの演出がやたら多くなった現代のオペラ上演の中で、このロラン・ペリー演出の上演は驚くほどにオーソドックスでよい。舞台もシンプルで象徴性があって渋い。ステージに大型の円盤が乗り、ドラマはその上で展開します。周囲には歯がかみ合った歯車がステージ円盤と共に動く趣向。人生は回り舞台、ロンド(輪舞)という象徴性があります。人物たちがドタバタドラマを演じながらそれも大きな人生の円環を切り取った場面であるかのように輪廻的時制で円盤上のドラマが展開しているという印象を受けます。
そして何より感動的なのは、歌手たちの生き生き感。声がよく通り明瞭。非常に小気味いい。それぞれに上手い歌手をよくこれだけ松本に集められたと感心しました。さらに素晴らしいのが指揮の沖澤のどか。ブザンソン指揮者コンクールで優勝したことは聞いていましたが、きびきびとした指揮ぶり。鮮烈なOMFデビューです。
松本に忘れがたい記憶がまた一つ増えました。
地区コード | 松本市 |
---|
管理番号 | 3217 |
---|
カテゴリ名 | 祭・イベント |
---|